定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】あの子の殺人計画

23/06/04_読破。天祢涼/著
風俗店のオーナーが殺害される。容疑者は美貌のシングルマザー。捜査の鍵を握るのは、
容疑者である母親から虐待されている娘の証言なのだが…。


椎名きさらは小学5年生。きさらの家は母子家庭で窮乏していて、勉強にもついていけず
クラスでも孤立していた。きさらの母の綺羅は、ファミレスの深夜勤めをしており、
きさらは1人で過ごす事が多かった。
きさらは母親の事を思い、小さくなった靴や服で我慢し、何かがあると食事を抜かれ
、更に自宅の風呂場で行われる『水責めの刑』で度々、熱を出しながらも賢明に
生きていた。
きさらが風邪を引いて自宅で寝込んでいたある日、付近の地域で風俗店のオーナーが
刺し殺されるという殺人事件が起きる。容疑者は、近くの防犯カメラに映り込んで
いたきさらの母親・綺羅だった。綺羅は、犯行のあった当日その時間には、きさらと
自宅に居たと証言し、きさらも同じ事を証言するが、
綺羅の印象は限りなくブラックに近かった……。


ある時、きさらのクラスに時期外れの転校生・翔太がやってくる。翔太はきさらに
付き纏い、きさらは母親に虐待されていると言うが、きさらは自分が虐待されている
とは認めない。しかし、保健室の遊馬先生や翔太の言う事と自分を照らし合わせていくと、不安になるきさら。
そして、ある日母親から理不尽に『水責めの刑』を受けている最中、母親の顔を
覗き見てしまう。母親の顔は、興奮で愉悦していて醜い顔であった。
自分が虐待されていると悟り、母親から開放されようと母親の殺害計画を目論む
きさらだったが、ある日、あまりの怒りに母親を大理石の灰皿で撲殺してしまう…。


果たして、風俗店オーナーを殺害した犯人は綺羅なのか?
綺羅がきさらを虐待する理由とは…。



嫌な話です。きさらは母親にネグレクトされ、折檻されても『悪いのは自分』と思い、
賢明に耐えています。救いとなるべき学校では、朝の洗顔すら教えてくれない母親のせい
で、常識外れと罵られ、孤立しています。
得意な図画で、賞を貰っても喜んでも貰えず、それでも母親を信頼し、賢明に生きて
います。そんなきさらに近付いてきた翔太は、自分も昔実の親に虐待され、今は養子に
なって幸せになったと言うのです。
それ(=実の親から離れられれば幸せになる)がきっかけで、きさらの心に希望が
湧いたのに、翔太は里親と上手く行かず、学期半ばでいきなり施設に戻されて転校して
行ってしまいます。
取り残されたきさらの絶望(養子に行っても幸せになれない)を考えると、苦しすぎて
泣ける……。


ラスト近くで沢山貼られた伏線がどんどん明らかになっていくのですが、翔太くんが
まさか!!?(ついで、きさらより貧困家庭で困ったちゃん扱いだったクラスメートが
まさか・・・)というちょっとだけ嬉しくなるようなどんでん返しもあります。


けど、綺羅さんの人生、切なすぎて読んだ後暗い気持ちになった話。_| ̄|○