定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】カインの傲慢

23/05/30_読破。中山七里/著
臓器を抜き取られた少年の死体が相次いで発見される。被害者達は貧しい家庭で育った
少年達。事件の捜査に警視庁刑事部捜査一課の刑事・犬養隼人が担ぎ出される。
犬養隼人シリーズ第五段。


練馬区の公園で、肝臓を半分切除された少年の死体が発見される。少年の体は痩せ細って
おり、極度の影響失調状態であった。調査の結果、被害者の少年は中国人と判明。
犬養隼人刑事の相棒、高千穂明日香は、学生時代中国語を専攻していた事から、
中国へ向かう。高千穂はそこで、中国の臓器売買について知る事になる。


当初、死刑囚から提供されていた臓器により、中国の臓器移植が他国と比べ、
飛躍的に進んでいた。しかし、法の改正により死刑囚から臓器が提供されなくなった
事により、臓器売買市場は地下に潜り、今では貧困県の住民達が臓器提供者と
なっているという。
被害者の少年も、貧困県の貧しい家庭に育ち、つい最近、養子縁組が決まり、
日本へ連れてこられていた。空港の防犯カメラや、母親の証言から、複数の偽名を
使う臓器ブローカーらしき男の姿が浮かび上がるが、その足取りはつかめない。


その後、都内では相次いで第二、第三の少年の遺体が発見されるが、被害者達は
やはり貧困家庭に育つ少年達だった。犬飼は第三の被害者の少年の葬儀場付近で
怪しい青年を発見し、コンタクトを取るが、中国籍の留学生である青年は、
証言するのを少しだけ待ってほしいと言い残し、その場を去る。
そして、その翌日、青年は河川敷で遺体で見つかる。
依然として犯人の足取りがつかめない中、交通事故で緊急搬送され、脳死状態に
なった少年が行方不明となる。犬飼達が辿り着いた真相とは……。



嫌な話ですが、しかし、どうなんだろう…と考えさせられたお話。
中国での死刑囚の臓器提供の考え方 ⇒『どうせ死ぬなら、臓器を提供して遺族に
お金を残そう!』
なんか、合理的のようなそうでないような…と思うのですが、当人がそれを
受け入れているのでなんとも言えないし、そういう国で育ったら、それも当たり前
なのかな?とも思ったんですけどね。


日本において、貧しい家庭に育ってお金に困ってる ⇒『肝臓半分売っても、
復活するらしいぜ?じゃあ、金になるなら売っちゃおうか?』とかいう、安易な
考えで手っ取り早い儲け話に目がくらんで自分の臓器を売っちゃう少年は、
やっぱり被害者だよねぇ…。
そもそも、親がきちんとしていれば(この話に出てくる少年達の親は、あまり
同情できない貧乏さんだったので)こんなふうにならなかったんだろうし、ねぇ。


最後の最後で、犯人?と対峙した犬飼さんですが、犬飼さんが闇の臓器提供を
阻止したせいで、子供の頃から多臓器不全で死にかけた幼い子供が、臓器移植できず
に死にゆく姿を見て、お前のせいでこの子が死ぬ。お前も人殺しだ、みたいな事を
言われてしまうのですが、もう、誰が悪人で誰が正しいのかよく分からなくなりました。


お金があったら、臓器移植も受けられる。お金がないから臓器を売る。
何か、本当にどっちの立場に身を置くかで、考え方なんて変わってしまう。
本当の悪って何なんですかね?と考えさせられたお話でした。