定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】レンタルチャイルド

23/05/28_読破。石井光太/著
物乞いが憐れみを誘うべく抱いた赤ん坊は、月日を経て『路上の悪魔』へと変貌を
遂げていく。インド、ムンバイへ3度赴き、貧困の最深奥を描いたノンフィクション。


筆者の石井さんが、2002年・2004年・2008年と3回現地に赴いて取材した
記事を元にしたノンフィクション小説。
最初にインドのムンバイを訪れたのは2002年。ムンバイの町には『物乞い』が
溢れていた。物乞いの中には赤ん坊を抱いている人達が沢山いた。『憐れ』さを
アピールして、より多くの金銭を得る為、赤ん坊と一緒に路上で物乞いをするのだが、
中にはマフィアから子供を借りて来る者もあるのだという。
この『レンタルチャイルド』が後々成長すると、成長段階に応じて生き方が変わる。
幼少期は物乞いやゴミを漁って生きる。マフィアはこんな子供達からも容赦なく
物乞いで得たお金を奪う。漸く10代になると、物乞いとしては『憐れさ』が足りず、
マフィア達は、彼等の目を潰したり手を切り落としたりして物乞いをさせる。
そんな中で育つ少年達は、自分達で青年マフィアを名乗り、下の子供達に対し、
同じことを繰り返して金銭を稼ぐようになる。
時には、ヒジュラ(向こうのオカマさん?)を襲い、金銭を奪い暴行を繰り返す。
女達は、この少年達に襲われない様に、集団で集まり、売春や物乞い、時に
廃品回収をして生活する。この売春によって生まれた子供達が、マフィア達の
手元に渡り、同じ事が繰り返される。


2008年にムンバイを訪れた時、ムンバイは都市化され、物乞い達は警察達に
よって一掃されていた。警察に捕まるのを恐れた物乞い達は、地方へ逃げ、より
稼げなくなった彼等は、同じ様な境遇の物乞い達の死体の写真や、時には死体
そのものを使って物乞いをする。病気の仲間たちの処方箋を僅かな金で買い、
その処方箋で『薬を買う金をくれ』と言って、金銭を得る。
結局、負の連鎖や貧困は解決されること無く、今現在もそういった生活を
続けている者達は数多く存在するのだ。



なんていうか、読んでてそうしようもない無力感に襲われる本。
どこの国にも一定量の貧困層は存在するのだろうけど、ここまで酷いと読んでいて辛い。
この中に出てくる虐げられている子供達は、虐げられて食い物にされようとも、自分と
一緒に居てくれる搾取する連中から離れない。一人で死んでいくのは怖い。
いくら性的欲求のはけ口にされようとも、自分を必要としてくれる人が必要だと、
劣悪な環境から離れようとしない。


これを読むと、どんだけ日本人が恵まれているかと思わざるを得ないけど、
知らないだけで日本だって、つらい思いをしている子供達は沢山いるんだろうな……_| ̄|○