定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】魂手形

23/05/21_読破。宮部みゆき/著
神田の袋物屋の三島屋では風変わりな百物語が行われる。従妹のおちかから、
物語の聞き手を引き継いだ富次郎。富次郎は、語られた話を墨絵に描き封じ込める
事で『聞き捨て』としていた。三島屋変調百物語の第7段。


『火焔太鼓』
語り手は、勤番武士の中村新之助。今から20年前の、彼が10歳の頃の出来事。
その頃中村家は兄の柳之助が跡継ぎとなり、嫂のよしと仲睦まじく暮らしていた。
ある日、城の方から法螺貝の音が聞こえてきた。
それを耳にしたよしは『大太鼓様』に変事があったのだと言う。
『大太鼓様』とは火消しの際に使う太鼓の事で、それを打ち続けると鎮火すると
言われていた。よしと新之助が城から呼び出され、馳せ参じると兄の柳之助が
怪我と火傷を負っていた。柳之助は、城に押し入り『大太鼓様』を盗み出そうと
した賊を阻止し、『大太鼓様』を切り捨てた為、『大太鼓様』から出た大火に
飲まれたのだという。柳之助の代わりに山に連れて行かれた新之助は、
そこで『大太鼓様』の秘密を知る事となる。
その後、柳之助は全快せず、下半身不随のまま道場の師範等をしてはいたが、
新之助に家督を譲り、嫂と共に山の中腹に移り住む。それから数年後、
新之助は『大太鼓様』の真の秘密を知ってしまうが…。


『一途の念』
富次郎の行きつけの屋台の団子屋で働くおみよ。ある日富次郎が団子を買いに
行くと、おみよが泣いていた。おみよの母は自分の目をくり抜こうとする程
苦しい思いをしており、ようやく死ぬことが出来たのだと言う。
心配した富次郎は、百物語の間におみよを招く。
 昔、おみよの母のお夏は『松富士』という旅館で働いており、料理人の
 伊佐治と所帯を持つ。しかし、伊佐治は肺病を患い働けなくなる。
 お夏は伊佐治を看病しながら夫婦生活を送っていた。
 運が悪い事は続き、お夏と伊佐治を立ててくれていた『松富士』の女将や
 料理長が亡くなってしまうと、『松富士』の客足は遠のき始めてしまう。
 お飾りであった『松富士』の大旦那は再婚し、新しい女将を立てるが、
 この女将が『松富士』を立て直す為にした施策は、格式高き『松富士』を
 遊郭化する事だった。お夏は美人だったが故、人気も高く男児を3人産む。
 3人は、全員伊佐治にそっくりな顔立ちをしており、親子5人は苦しいながら
 も仲良く暮らしていた。しかし、伊佐治の具合がいよいよいけなくなってきた
 時、おみよが生まれる。おみよは、伊佐治には似ていなかった…。


『魂手形』
語り手は、粋な老人吉富(きっとみ)。彼が15歳の頃に経験した出来事を話す。
吉富の一家が営んでいた『かめ屋』という木賃宿に、ある日、痩せ細った
黒く焦げた肌を持ち、鳥目を患う『七之助』というお客がやって来る。
七之助はなかなか鳥目の具合が悪く『かめ屋』に長逗留する事になり、
吉富と仲良くなっていく。七之助の泊まる部屋は何故か冷気を伴い、
七之助はどんどん体を弱らせていく。吉富は、七之助が背負う事情を聞き、
七之助が連れている水面(うわばみ)という幽霊とも仲良くなっていく。
水面が成仏出来ない理由を聞いた吉富は、水面の敵を討つ事を買って出る事にするが…。



なんていうか、もう、前の二話が物凄く切ない話。
碓かに、火事を防げる『大太鼓様』は、この時代に無くてはならない物だと思うが、
何もソコまで…。
そして、お夏さんの身の上が悲しすぎて、読んでいて辛い。
あの世で伊佐治さんと幸せにいて欲しい。
最後のお話は、この2つの話の重さを少しだけ軽くしてくれる。
ついで、おちかちゃんがご懐妊!富次郎さんのいいお兄さんっぷりが止まらない(笑)


最後の最後でホッとさせてくれてありがとう!な、お話でした。
このシリーズは好きなので、興味を持った方、一作目から長いけど読んでみてくださいね。