定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】愚者の毒

23/04/18_読破。宇佐美まこと/著
1985年、上野の職安で出会った葉子と希美は、互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。
しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が2人に襲いかかる。



香川葉子は、妹夫婦が作った借金の為に家を追われ、話さない甥を連れて逃げていた。葉子の甥の達也は、両親が焼身自殺を起こした際に、一人助け出された生き残りで、そのショックで話さなくなったと思われていた。借金取りに見つかっては夜逃げを繰り返し、新しい生活を始める、という事を繰り返していた矢先、上野の職業安定所で石川希美と出会う(1985年)。
たまたま気があったのか、希美と仲良くなった葉子は、その後、希美の紹介で、調布市深大寺にある旧家の難波家で家政婦として働く事になる。難波家の長子_ユキオと幼なじみなのだという。
難波家での暮らしは穏やかで、いつしか葉子は難波家の長子、ユキオに心惹かれるようになる。だが葉子は、ユキオが時々、夜中に1人でこっそりと外出することに気づいていた。そして、それは誰か女からの呼び出しを受けているという事にも。


葉子が家政婦として働きだしてから翌年、葉子と達也が施設の催しで親子キャンプに参加していた夜、難波家の当主である寛和が就寝中に死亡してしまう。寛和は狭心症を患っており、留守にする際も重々薬を手元に置くよう注意に注意を重ねたはずなのに…。そして、葉子は、寛和の書斎を見渡したとき、違和感を覚える…。


石川希美は、貧しい一家に生まれ、妹兄弟、働かない父親を養っていた。父親は1963年に炭じん爆発事故に遭い、一酸化炭素中毒患者となってしまう。事故で体が不自由になった父親は、事ある毎に暴力を繰り返し、生活が立ち行かなくなった為に出稼ぎに出ていた母親_シヅ子も、一家を捨てて逃げてしまう。
一家が暮らす長屋街では、竹丈という男が高利貸しなどを営み、そこの住民を良い様に服従させていた。希美の父親は、竹丈が妻のシヅ子を隠していると信じ込み、常々竹丈を恨んでいた。
1966年の秋のある日、希美の父がシヅ子と間違えて希美の妹に襲いかかり、希美は父に殺意を覚える。その事を幼なじみのユウに話すと、ユウは高利貸しの竹丈は自分の母親を弄び、自分を生んだ後母親は自殺したという事実を話す。それ故に、自分は竹丈を恨んでいると言う。そして、竹丈に希美の父親を殺させる計画を実行に移すが……。


なんというか、読んでいて辛い。特に、希美さんの過去が壮絶すぎて、その後葉子さんと出会って仲良く編み物とかしてる際に、物凄く幸せを感じていた、という描写に涙が出ます。自分だって、年頃なのに兄弟の一番上にいると云うだけで、家族を養い、全てを我慢して生きなければならなかった過去。折角、父親がいなくなったのに、兄弟達と離れて逃げながらの生活。その後襲ってきた地獄のような日々。生まれてくる環境を選べなかった希美とユウの人生を読んでしまうと、葉子さんも不幸なんだけど、二人の比じゃない感じ…_| ̄|○
最後の最後で、養子に貰われていった達也君が成長した姿で登場するのですが、もうね、みんな不幸(;_;)
読後のやりきれなさ全開の本ですが、読み応えはあります。おすすめです。