定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】罪のあとさき

23/03/30_読破。畑野智美/著
中学時代の同級生、正雄と再会した楓。正雄はかつて、同級生を殺害していた。
何事もなかったかのように接する正雄。楓は、殺害した理由などを訊けないまま徐々に正雄と過ごす時間が長くなっていくが、それには、ある事情があった。罪を背負った人間は償ったあと、どのように生きていけばよいのか。


主人公の楓はカフェでバイト中、中学の同級生の正雄と再会を果たす。正雄は中学2年の時、同級生を殺害し、楓の人生から姿を消していた。過去の事を忘れたかの様に接してくる正雄に、いつしか楓の心は惹かれていく。
楓は前職で勤め先の同僚と交際していたが、交際相手がストーカーと化し、暴行された挙げ句中絶し、更に加害者の様な扱いを受け、心身共に疲れ果てて、友人の紹介で今のカフェでバイトをしていた。交際相手に対しては、完全泣き寝入り状態。そんな元彼が、楓のアパートにやってきた時、一緒に居た正雄が守ってくれ、一緒に暮らそうと言われ、同棲を始める。


作中同時進行で、中学生時代の正雄が描かれる。
正雄の家は、父・母・年の離れた発達の遅い妹(当時3歳)と、柴犬の大豆とミニチュアダックスの小豆。仕事でほとんど家に寄り付かない父の代わりに、母親は育児の不満を妹と正雄にぶつける毎日。そんな中、近所で猫が殺害される事件が相次ぎ、正雄は犯人が旧友であることを知ってしまう。問い詰めても『面白いから殺す』『みんなが死体を見たがっている』等と悪びれない級友に対し、正雄は煩悶する。
しかし、どんどんエスカレートする級友はある日『楓の妹を殺したい』と嘯く…………。
長じて正雄は、自分がやったことに対する罪『被害者家族へ与える影響』『加害者家族に与える影響』『自身の周辺に与える影響』全てを反省します。『自分は幸せになってはいけない』から、楓と恋人になってはいけない。楓と会えるだけで、自分は幸せになってしまうから、会ってはいけない、と何度も煩悶します。
痛々しくてぎこちない、二人の心のふれあい。


犯罪を犯した後の人間は、その後の人生をどう生きていったら良いのか?と考えさせられるお話。
こんな人ばかりだったら、繰り返し犯罪を犯す人なんて居ないのにね。
読んでいて、正雄が気の毒になるお話でした。