定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】まだ人を殺していません

23/02/27_読破。小林由香/著
事故で娘を失った過去を持つ翔子は、亡き姉の息子の良世を預かり育てる事になる。だが、良世は摑みどころがなく何を考えているかわからない。不気味な行動も多い良世を育てる事に翔子は自信が持てず、不安が募っていく。


主人公の翔子は出来の良い兄と姉を持つ三人兄弟の末っ子。5歳の娘を事故で亡くし、それを理由に夫から暴力を振るわれ、離婚される。そんな翔子の元に、亡き姉の忘れ形見の良世が預けられる。良世の父親は、二人の人間の首を切り、ホルマリン漬けにするといった猟奇事件の犯人として逮捕されている。施設から翔子のもとにやって来た良世は、口も聞かず、本心を隠そうとする。良世を理解したい翔子は、父親に面会しに行くも『あの子は人殺し』『良世は人を不幸にする』といった、嫌な言葉しか聞き出せなかった。良世と過ごすうち、首をはねられた娘と自分の絵を書かれたり、良世が飼いたいと飼ったハムスターを殺したり、異常な行動が見られ、翔子はほとほと良世の事が理解できなくなっていく…。しかし、いろいろな事件を重ねるうちに明らかになっていく、良世の過去と心の動きで、翔子は改めて良世を自分の子供として育てようと決心する。


良世の背負っている背景が重すぎて、読んでいて辛い。猟奇殺人を犯した男の子供として、世間からの好奇の目に晒され、虐められ、貶められ、9歳の子供には重すぎる!母親(翔子の姉)は、肺にもともと欠陥があり、良世の出産で命を落とし、9歳で父親が犯罪者として逮捕されるまでは父親と暮らしてました。優しかった父親が如何にして狂っていったか。それを受け止めなければならなかった、幼子の不憫すぎる状況。翔子にも色々と過去に不幸な事があり、自身が子供を育てる事に対して懐疑的で、手探りで良世に歩み寄っていくのですが、良世が中々に手強い(まあ、子育てに対して絶対的な自信を持つ親なんてこの世にいるんでしょうかね(^o^;))


兎に角、重くて難しいお話。
翔子さんと良世くんには幸せになって欲しい、と願わずにはいられない本でした。