定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】母親ウエスタン

22/12/04_読破。原田ひ香/著
父子家庭の母親役をして、家庭が軌道にのると人知れず去っていく、母のない子持ちやもめの家庭を転々と渡り歩く広美。それは、子供にとっては女神でもあり、突然姿を消す残酷な悪魔でもあった…。


様々な家庭が描写されています。様々な土地を渡り歩く広美は、子供の養育が上手く行っていなそうなシンパパの家庭を見つけると、時には色仕掛け、時には恋愛関係なく、その家庭に入り込み、子供を育てます。それは、本当の母親かそれ以上に。
愛に飢えた子供達は広美を本当の母のように慕い、日々を共にしますが、家庭環境が安定すると、広美は何処へともなく姿を消します。
もう一人の主人公である(多分)女子大生のあおいは、恋人の佑理の様子が可怪しい事に気付き、尾行しますが、佑理の行く先には夜の店がり、その店のママである広美に辿り着きます。佑理を問い詰めると、広美は一時期自分の母であったことを告げられます。佑理は広美が自分の母であった事を広美に確かめたくて夜の店に通っていたとあおいに告げますが、そんな佑理の近辺に、自分も広美に育てられたという青年と少女も現れ、広美の過去が更に謎に満ちていく事に。


広美さんの過去は、読んでいると容易に想像がつきます。寧ろ、ここまで子供に尽くす母親像は中々ないのでは…と管揚げさせられます。しかし、時には数ヶ月、時には数年かけて育まれた子供達は、広美を恨んだりせず、ずっと慕い続け、心を痛めています。広美さん自身は、過去を引きずらず、昔育てた子供達と出会っても『記憶にない』と公言します。
これは、正直しんどい(←慕ってきた子供達が)時にはDVを受け、重症を負いながらも子供達を守り育てる姿は、本当に母性に溢れているので、何故そこで突っぱねるのか、本当に読んでいて悲しい。広美さん自身に、本当に育てたかった自分の子供の変わりに、よその子を育てている(ネタバレ?)という自覚があったからこそなのですが、それにしても悲しい。広美さんの人生も悲しいし、育てられた子供達の心情的にも。


最後の最後で、広美さんの人生に少しの救いが残ったのは本当に良かったな、というラストでした。