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【読書感想】誰もボクを見ていない ~なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか~

23/05/03_読破。山寺香/著
2014年、埼玉県川口市で発生した凄惨な事件。少年は何故犯行に及んだのか。誰も止めることはできなかったのか。実在の事件を描く渾身のノンフィクション。


2014年3月。埼玉県川口市で70代の夫婦が殺害される事件が発生。その後、しばらくして、夫婦の孫が強盗殺人容疑で逮捕された。当時17歳の少年は裁判で懲役15年の判決を受け今現在も服役中。
近年、高齢者が襲われる事件はしばしば報道され、孫が祖父母を手にかけることも少なくない。この事件も世間では『素行のよくない孫がまたやらかした』等と受け取られたようだ。しかし、公判等で詳しい事が分かってくるうち、ただの『遊ぶ金欲しさの事件』ではなかった背景が浮かぶ。この本では、そんな少年の事件における背景の事情を丹念に掘り下げ『事件の真相』を明らかにしている。


取材の過程で明らかになった事は、少年の育った環境があまりにも過酷で常軌を逸したものだったということ。実母と養父から身体的・性的虐待を受け、小学5年生からは学校に通う事すら出来ず居所を転々とし、自堕落な母親と行動を共にし、野宿で生活していたことすらあった…。


少年の母親は全く働く気がなく、基本的に男任せの生活を続け、男が稼いでくる金で生活(パチンコ屋やゲームセンターに入り浸り、ホテルを転々とする)した。いよいよ依存する男がいなくなると、少年を稼ぎ手として使った。
そしてとうとう身体行き詰まった母親は、少年に対し、『祖父母の所で金を借りて来い。借りれなかったら、殺してもいいから奪って来い』と指示する。この時の母親の発言を、公判では母親は否定する。結局、証拠が無いため母親は強盗罪として懲役4年6ヶ月の判決を受けた。


少年は生活費の工面をする一方で、13歳下の妹の為、時には盗む等して食べ物を用意し、移動時には抱きかかえ、親に代わって愛情を注いで暮らしていたという。この妹は、3番目の夫と公園生活をしている最中に産んだものである。
少年は刑務所の中で、自分より早く社会に復帰する母親が妹と係わる事を唯ひたすらに心配している……。


この本では、筆者に勧められて少年が書いた『手記』が付されており、それによると『自分が取材を受ける理由は、世の中に居る子供達への関心を一人でも多くの方に持って頂く為の機会作りのようなものです』と振り返る。世の中の全ての、自分と同じ様な境遇の子供達を少しでも救う為に。



ノンフィクション小説ですが、もう、滅茶苦茶苦しい。母親がクソ過ぎて、この少年が本当に可哀想でした。
彼の一家は一時期生活保護を受けた事があり、そんな中で児相の方も目をかけ、注意して見守っていたのですが、母親が生活保護受給した後、あてがわれていた宿舎から逃げ出し、籍をそのままにした為、行方が追えず、彼は基本的に居所不明児童となっていました。妹は無戸籍児です。なんで、自分の生活の面倒すら見られない人間が、子供を産むのか不明ですが、この母親にとっては子供は『金づる』だったみたいで、少年も、妹がもうちょっと成長したら体を売られる、と心配しているのです(´;ω;`)
なんか、母親って、絶対的な母性本能ってのを持ってるみたいな神話、嘘だよね…って思った一冊です。