定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】展望塔のラプンツェル

23/04/08_読破。宇佐美まこと/著
多摩川市は労働者相手の娯楽の街として栄えていた。その街の片隅では、貧困、暴力、家庭崩壊、ありとあらゆる問題が日常毎として営まれている。その街に住む、フィリピン人の息子_海(カイ)と崩壊した家庭から逃げてきた那希沙(ナギサ)。二人はある日出会った、見知らぬ幼児の面倒を見る事にするが…。


このお話は、3つのパートで構成されていて、主人公が『児相に務める松本悠一』『多摩川市に住むカイとナギサ』『結婚して不妊治療をするも中々子宝に恵まれない落合郁美』となっています。


『松本悠一』パートでは、
多摩川市の児相に勤務する松本悠一は、市の『こども家庭支援センター』の前園志穂と連携して、問題のある家庭を訪問していた。ある日、石井家の次男_壮太が虐待されていると通報が入る。どうやら壮汰は家を出て、ふらふらと街を徘徊しているらしい。悠一と志穂は何度も石井家に出向くが、壮太とは会えない日が続くーーー。


『カイとナギサ』パートでは、
この荒んだ街で寄り添って暮らしている、フィリピン人女性の息子のカイと崩壊した家庭から逃げてきたナギサは、街をふらつく幼児を発見する。薄汚れていて、腹を空かせている様子の幼児を見かね、ナギサは幼児に『晴(ハレ)』と名付け、甲斐甲斐しく世話をするー。


『落合郁美』パートでは、
結婚して6年経つも一向に子供に恵まれず、不妊治療を始めた郁美だが、夫の圭一は郁美が思い悩めば悩む程、郁美から離れていく。そんな郁美が住むマンションのベランダからは、石井家が見渡せ、毎日石井家の五歳児の次男が父親から虐待されているのを見ており、心を痛めていたーーー。



カイは日本生まれの日本育ちだが、母親の血を受け継ぎ、フィリピン系の顔立ちをしている故か、日本人のコミュニティとは馴染めない。かと言って、フィリピン人の母が里帰りする度に連れて行かれるフィリピンの人達の中でも、自分は溶け込めず、異物感を感じていた。
ナギサは多額の借金を拵えて逃げた父親の借金を返す為に、子供を顧みる余裕のない母親と、それ故に堕落した兄と暮らしていますが、幼いうちからナギサは兄の慰み者となり、そのまま兄の処世術の道具としてその体を他の男達に提供され続けていた所をカイに救い出された過去を持ち、今はカイの家で同棲している。
ナギサは兄たちの性的暴力から、17歳でありながら子供を産めない体になっていて、それ故に、ハレを可愛がる。自分の人生に鬱屈を抱えるカイは、ハレを自分とは違うステージに生かせたいと願う。


なんていうか、読んでいて切なすぎるお話です。どうして、こんな悲しい思いをしている子供達を救うことが出来ないのか、誰が悪で何が悪いのか。
本当に、頭ん中ぐるぐるになりそうなお話でした。


3つのパートの人物たちが、ラストで絡み合うのですが、ワタクシの想定していたのと全然違ってました。
が、逆にラストで!!となりたい方に(それ以外の重苦しいテーマがアレですが)どうぞ。