定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】氷の致死量

22/11/10_読破。櫛木理宇/著
聖ヨアキム学院中等部に赴任した英語教師の鹿原十和子は、14年前、学院で何者かに殺害された、教師の戸川更紗に興味をもつ。彼女を知る人間が口を揃えて『自分と似ていた』という為である。更紗の事を調べる内に、十和子は、更紗が自分と同じアセクシュアル(無性愛者)ではないか、と思うようになる。その一方、街では八木沼という男が、犠牲者を解体していた。八木沼は亡くなった更紗に異常な執着を持つ。八木沼は十和子に更紗の面影を見、十和子に執着する。そんな中、彼が5番目に選んだ獲物は、十和子の担任する生徒の母親だった。


この本には、性的マイノリティの多種多様な人物が出てきます。例えば主人公の十和子はアセクシャルでアロマンティックなのだそうで。これは、無性愛者で、他人と恋愛するのを好まない傾向にあるのだそうです。他人と関わらなきゃ良いだけでは?と思ったのですが、この本を読んでいると、世間に溶け込むため『普通』を演じなけれればいけない『息苦しさ』があると知りました。他にも、色々なマイノリティの人が出てきます。勉強になりました。


ついで、親からきちんとした養育をなされていない子も沢山出ます。
十和子も更紗も、抑圧的な母親に育てられ、『いい子』として生きる為に必死だった。
犯人の八木沼は、母親が宗教にのめり込んでいて、家庭は家庭として機能していなかった。
八木沼の5番目の犠牲者である市川美寿々という女性は、両親の愛情に恵まれず、『妊娠すると母親が実家に寄せてくれる』という事に希望を見出し、幼い内から売春で生計を立て、22回も妊娠して堕胎しています。その22回の内、たった一回だけ出産し、この世に生を受けた子が、十和子が担任を受け持つ市川樹里。こんな母親ですから、もちろん母親からはネグレクトされ寮住まいで、摂食障害を患い、言動も可怪しい子です。
話の途中、樹里はある事件がきっかけで寮を追い出され、親戚にも邪険にされ行き場を失い、十和子が自宅に迎入れるのですが、本当、そこの描写だけが救い!って位、嫌なご家庭ばかりの本でした(~_~;)


ラストで八木沼が意外な発言をするのが、まあ、救い…なのかな?あとは、十和子が旦那と別れられて、親の束縛からも逃れられてさっぱりするし。ただ、個人的な感想を言えば、上記で説明した『不幸な生い立ち』のキャラクタが、とことん不幸になる?犯罪に手を染める?ってわけじゃないんだぞ!っていうキャラクタが一人くらい欲しかった…と思います。