定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】陽だまりに至る病

22/09/30_読破。天祢涼/著
小学5年生の咲陽は、父親が帰ってこないという同級生の小夜子を心配して親に内緒で家に連れ帰る。その翌日刑事が訪ねてきた。小夜子の父親を探しているので小夜子に話を聞きたいから探しているという。しかし、小夜子とともに過ごすうちに、小夜子の父親が殺人事件の犯人かもしれないと疑い始める。『コロナと貧困』を軸に起こった事件を小学生の女の子目線と事件を追う刑事目線から描いた小説。


主人公の咲陽は、レストラン経営者の父親と看護師の母親を持つ、割と恵まれた家庭の子。その咲陽の家の裏に建つボロアパートに、咲陽の同級生の小夜子が住んでいた。小夜子の家はシングルファザーで、あまり恵まれていない家庭環境のよう。
特に仲が良かったわけでもない二人だが、ある日、自室からアパートを見ていた時、
小夜子に気づく。小夜子が気になった咲陽は小夜子に会いに行き、『父親が暫く帰ってこない』という小夜子に同情し、家に連れ帰ってしまう。親や刑事から匿って生活するうちに、情が湧いてくる…。


コロナ禍で父親の仕事も母親の仕事もうまく回っていない事を薄っすら気づく咲陽。
『ご飯を少なく食べよう、とか、他の誰かに貰おう』=『小夜子のやっていること』
『あまり電気やガスを使わない』=『小夜子のやっていること』
そこでじんわり、小夜子の姿は自分の未来の姿と変わらない?と気づくのです。
小学5年生の子って、こんななのかな?(昔過ぎて自分のことは忘れました)


また、殺人事件の被害者の子。岩手から親の反対を押し切って東京の大学に出てきたものの、奨学金だけでは賄えず、バイトを重ねていた先、コロナ禍で仕事が激減。水商売系のバイトを探そうにも、そういう女性が夜に溢れすぎて、仕事出来ず、親も頼れず気がついたらネカフェ難民に。SNSで売りをして生活費を稼いでいました。
コロナ禍でよく聞く話なのですが、読んでいて苦しい。自分の娘だったらと思うとどうにもやり切れない。


小夜子は小夜子で駄目な父親と暮らしていて、何かあると小夜子がやった事にされ(辞めさせられた会社に謝らせに行ったり)日常的に暴力を振るわれ…と、なんとも言えない状況。


読み出すと止まらなくなるけど、嫌な気分になる小説です(ラストに救いはありますので、沈みっぱなしではないです)