定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】騙し絵

2023/01/20_読破。犬飼六岐/著
信太郎の住む貧乏長屋に、おかしな親子が越してきた。親子は越してきたその日から、何故か長屋の嫌われ者となる。息子は信太郎と同い年で名前は正吉。親の目を盗み、正吉と進行を交えるも、世間の目は冷たく、正吉親子は長屋の住人から迫害を受ける。そんな中、正吉親子に降りかかる事件の数々。


正吉の父親は弁蔵。多分、知的障害者の方です。弁蔵は商家に生まれ、親が家を継がせようと努力しましたが、継がせる前に死んでしまい、頼りにしていた番頭は弁蔵を裏切り金を持ち逃げし、弁蔵は失意の中遊郭の女性に夢中になり、身請けして夫婦となり、正吉を生んだ後に正吉が幼い頃に妻は疾走します。その後、弁蔵と正吉は親子二人、すみかを転々としながら件目に生きて、流れ着いた先が件の貧乏長屋です。弁蔵は、疑うことを知らず、大抵のずるい連中に食い物にされながらも賢明に正吉を育てて生活します。正吉もそんな父親の世話をしながら、真っ直ぐ?に(世間を湾曲した目で見ながら)育ちます。
一方、信太郎はまっとうな父親を持ち、日々を過ごしながら正吉と出会い、自分の価値観を改めていきます。信太郎の母親は、弁蔵と正吉を心底嫌っており、正吉と仲良くなっていく信太郎に対して悪意をぶつけますが、父親の栄五郎は信太郎の思うようにさせます。信太郎が端々に口にする、母親は好きだし、自分にかける愛情も分かっているが、少しでもその愛情が外の人にも向くように…という台詞は心を打たれます。


読み進めていくと伏線のように、信太郎があの時こうしていれば…という言葉が入るんですよ。なので、ああ、弁蔵正吉親子、どっちか死ぬのじゃなかろうか…と読んでいるとハラハラさせられます。たしかに、弁蔵さんの言動は悪事に巻き込まれ、長屋中の人間の悪意を向けられ、どうしようもないんですけど、正吉は健常者どころか、よその子供より数倍賢い(世間を見すぎている)ので、悪意を多分人一倍理解した上で、12歳という年齢ながら、受け流すすべを身に着けていて、本当に尊い!
読んでいて、何故これ程までにこの親子が迫害されなければいけないのか…ともどかしくなります。けれど、信太郎の母親は普段はとても優しく、息子と家庭を守りたいが故に、弁蔵親子を嫌うことで自分の家庭を守ろうという考えが描かれています。
一方の信太郎は、正吉と仲良くすることで他の長屋の子から迫害を受けながらも、何が正しくて何が間違っているかを学んでいく…(いや、正解があるかなしかで言うと、解答はないのですが)という、中々に考えさせられるお話。


すみません。町人物だ、楽しく読めるかなと侮っていましたが、この本、良い本です。人としての心の持ちようを定義してくれる本だと思います。個人的には読んでほしいかも…。