定年まであと何年?

あと何年働いたらリタイアできる?をモットーに生きるアラフィフの日々のつぶやきです

【読書感想】だまされ屋さん

22/12/17_読破。星野智幸/著
子供と絶縁した母・秋代の家に、ある日謎の男が現れる。娘と家族になろうとしているという。これは新手の詐欺なのか、それとも歪んだ一家に福音をもたらを救う救世主か?


秋代は亡き夫の念願の家を売却し、団地で一人暮らしをしている初老の女性。息子二人と娘一人が居るが、全ての家族に会うことを拒否されている。次男春好を溺愛するあまり、春好の妻に内緒の三回目の借金を、長男長女の意見も効かず、家を売却した金で肩代わりしてしまった為、長男優志の逆鱗に触れてしまったからだ。一人寂しい老後を送る秋代のもとに、ある日、長女の巴とお付き合いをしており、先立ってお義母さんに会いに来た、という謎の男が現れる。男は口が上手く、寂しい秋代の懐にするりと入り込むが、疑いを持った秋代は、春好の妻に相談する…と、ここからどんどん話が展開していくのですが、あらすじを説明するのが難しい、複雑な(いえ、難しいお話ではないのですけど)家族関係・人間関係を描いた本です。


長男・優志は、幼少期からしっかりしていて、次男の春好が大病を患い、その看護に両親が突き切りだった事により、春好の下に生まれた長女・巴を可愛がります。成長した優志は、在日中国人の梨花と事実婚をしています。
長女・巴は、優志から偏った教育を受け、幼少期から成熟した人間として育ちます。そして、家から逃れるように一人留学し、プエルトリコ人の男性と出会うも、離婚して娘を連れて帰国し、シングルマザーとして生活しています。
次男・春好は、幼少期に大病を患ったこともあり、両親の関心を一手に受けて、ワガママで俺様タイプ(でモテる)に育ちますが、挫折に弱く、難題が起こるとすぐに逃げ出し、その尻拭いを延々と母の秋代が行ってきました。月見という伴侶を持ち、子供も一男一女を設けていますが、その愛情は専ら長男にのみ注がれていて、妻月見の不満のもとになっています。


この家族の複雑な親子関係と、優志の妻・梨花や巴の娘・紗良(父親譲りの褐色の肌・縮毛質のハーフ)の人種差別問題、優志が抱える、性的マイノリティ?問題などが入り混じって、本当に説明するのが難しい小説なのですが、文章は柔らかく、読みやすいのでどんどん引き込まれていきます。
最後、この家族に第三者も交えて一気に大円団へ繋がるのですが、そこに至るまでの、家族の捻れっぷりが凄い。特に長男優志の捻れ方は、本当に良くわからなかった(苦笑)


家族に関して・家庭に関して複雑な思いを抱いていない人も、ちょっと読んでみて!っとなる作品です。